2011年6月26日日曜日

「The Kingdom of San d'Oria II」

次の日。

僕は待ち合わせ場所である南サンドリアの西門にいた。
西ロンフォールへと続くこの門は、狩りに向かう新米冒険者やチョコボに騎乗した中堅以降の冒険者達でいつも賑わっている。
少し前にここに到着し、近くにある「競売」と呼ばれるオークションハウスを利用する人々の活気を感じながら約束の時間を迎えた。

しかし…彼女は現れない。
冷静に考えてみれば話がうますぎた。
ただすれ違っただけの相手を信用しすぎたのかもしれない。
右も左もわからない冒険者見習いをだまして楽しんでいる連中がいるという話も聞いたことがある。

「やっぱりだまされたのかな?」

これも一人前になるための勉強だ。
成長するということは少しだけ他人を信用しなくなること。
いつまでも感傷に浸っていても仕方ないと歩き出した時、

「ごめんなさい」

彼女からの連絡。
昨日の別れ際に連絡先の交換はしてあった。

「用事が長引いちゃって。今、支度しているのでもう少し待っててね」

ええ、いくらでも待ちますとも!
なんだったら着替えを手伝いましょうか?(`ω´)グフフ
さっきまでの意気消沈はどこへやら、いきなりテンションが上がった僕はその場で小躍りした。
それをさっきから微動だにしない門番が生暖かい目で見守っていた。

「お待たせ!」

遅れたことを詫びるように駆けてきた彼女の、その身なりはやはり冒険者としての貫禄を感じさせるものだった。

「じゃあ、行きましょう」

そう言うと彼女は門をくぐって西ロンフォールへと。
僕はその数歩後からついて行く。

ミミズ、うさぎ、羊。
つい最近までお世話になっていた生き物達を横目に結構な速度で歩いて行く。

オーク、ゴブリン。
アクティブな彼らにも絡まれなくなるくらいには僕も成長したのだ。

「ラテーヌ高原には行ったことある?」

アウトポストを過ぎ、西ロンフォールのガードポイントが近づいてきた時に彼女が僕に問いかけた。

「はい、入り口の辺りだけですが」

「じゃあ、入り口を抜けたら冒険のはじまりだね」

そう、僕の冒険はラテーヌ高原から始まったのだった。

To Be Continued…

2011年6月4日土曜日

「The Kingdom of San d'Oria」

それは僕がヴァナ・ディールに降り立って間もない頃の話…

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「こんばんわ」

南サンドリアから北サンドリアへ抜ける凱旋門で僕は声を掛けられた。
声の方を振り返るとそこにはヒュームの女性が立っている。 
知らない顔だ。
そもそも僕がこのサンドリア王国に居を構えて日が浅く知り合いなどいない。

「こんばんわ」

ぎこちなく挨拶を返す。
見ず知らずの僕に声を掛けてくる真意を図りかねていると彼女はじっとみつめてきた。
それで彼女には僕が駆け出し冒険者であることが分かったであろう。
何しろサンドリア王国に冒険者として登録した際に貰った安物の服に安物の剣。
そろそろ盾も欲しいところだが、まだそれを買えるだけの金がない。 

冒険、しませんか?」 

彼女はにこりと微笑むと唐突にそう言った。
それがドジっ娘天然黒魔道士のセリフなら何の躊躇もなく頷いただろう、僕の趣味嗜好的に
しかし、彼女は剣を携えていることから黒魔道士ではなさそうだし、ドジっ娘のオーラも感じられない。
なにより彼女の服、剣そして盾はサンドリア王国でそれなりの戦績をあげた者のみが持つことを許される品のようだ。 
僕と同じ戦士だろうか?
そもそも戦士がナンパするのは白魔道士と相場が決まっている。 
かなり格下の戦士に声を掛けるなんて、やっぱり天然
だけど、彼女の言う『冒険』が何なのか僕はとても気になった。

「はい、お願いします」
「じゃあ明日の夜、ここで待ち合わせしましょ」 

そう言うと彼女は凱旋門を抜けて北サンドリアのモグハウスの方へ駆けて行った。


To Be Continued…